2018 新製品特集 2:somari 90【開発秘話】

今春imaから誕生するまったく新しい形のスイムベイト、somari 90。前回は実際に使用したアングラー3名のインプレッション等をご紹介したが、今回は発案者でありながらその開発に最後まで携わったimaスタッフ・三浦氏に、somari 90の開発についてインタビューを行った。

somari 90の特徴

編集部:今回のインタビューの主役となるsomari 90の特徴を改めて教えていただけますか?

三浦:シンペンを一定レンジで止めて流すような使い方をしたいというのが開発のきっかけだったため、サスペンドに近い超スローシンキングで使えるということが特徴の一つです。

参考値としてのフォールスピードは、塩分濃度が高い海水域で1m/12秒。最も多く使われるであろう汽水域では若干早く沈むはずですが、巻かずに流れに乗せてドリフトさせてやる、そんな使い方も可能です。

対応する速度域としては、河川でのアップクロスでの使用や、ダウンに入れてから巻かずに誘うことを可能にするために、(リトリーブ)スピードのレンジを低速に合わせました。
実際の感覚としては、エクストラハイギアのリールを使用した場合で、ハンドル1回転0.8秒から3秒くらいのスピード。

アクションはワイドピッチのS字スラロームにこだわって作りました。
その中でも特に力を入れたのはリトリーブスピード。この手のルアーはスピードを上げないと泳がない物が多い中、somari 90はスローリトリーブでもワイドなS字アクションで泳いでくれることが魅力だと思います。
要するに誰が使っても巻くだけで簡単にS字アクションを出せるということですね。

ただ、スローリトリーブを重視したことでファストリトリーブには対応していません。
そのため、早く巻いてしまうと水面を割ってしまうことと、フォールが非常に遅いため、着水後にラインがふけている状態で早く巻いてしまうと水面を滑ってしまうことがあるので、使うにはちょっとしたコツが必要なルアーです。

早く巻いて使いたい方は、imaで言うとハニトラシリーズやp-ceシリーズ、YOICHIシリーズのようなタイプのルアーを使うことをオススメします。

開発のきっかけ

編集部:前述の冒頭で、“シンペンを一定レンジで止めて流すような使い方をしたいというのが開発のきっかけだった”とおっしゃっていますが、その事の発端を具体的に教えていただけますか?

三浦:具体的言うと、濱本さんが行う3Dドリフトやルアーを水中に止めて流す釣りを見たことがきっかけでした。

濱本さんはHONEY TRAP(以下、ハニトラ)でその釣りを行うのですが、ハニトラのようなシンキングペンシル(以下、シンペン)だとルアーが沈む時間と川の流れの速さ、そして水深の関係を読むのが重要になってきます。それを慣れない場所でやると沈めすぎて根掛かりさせてしてしまったり、逆に狙いたいレンジを狙えなかったりと、どうしても上手くで出来ないことがありました。

しかし、ルアーが水中の一定レンジに止まってくれれば、誰もが簡単に似たような動作を行うことが出来るのでは?といったことから開発が始まりました。

開発ストーリー

編集部:ではこのまま、somari 90が現在の形になるまでの過程を少し詳しく教えていただけますか?

三浦:もちろんです。ただ、本当に時間を費やした開発だっただけに少し長くなってしまうかもしれませんが、ファーストサンプルから製品版のモデルが出来るまでをじっくりお話させていただきます。

1st Sample
ハニトラをファットなフォルムに

まず最初に作ったのはハニトラに合わせた95mm、23gのプロトルアー。

水中で止められることがこのルアーのキーポイントだったので、浮力を持たせるためにハニトラよりもファットなフォルムで、正面から見ると三角のおにぎりのような形。

最初のサンプルは近所を流れる汽水の川でテストしたのですが、アクションと浮力のバランスは良い感じながらも、太すぎて秋のハイシーズン以外は敬遠されそうなフォルムだったため、もう少し細くして欲しいと開発にリクエストした記憶があります。 

 

2ND SAMPLE
やや細く、やや長く

次に上がってきたのが最初のプロトをやや細く、そして全長を5mm伸ばした95mmプロト。

見た目はハニトラのようなデザインで大分良くなった感じはしたのですが、案の定細身にすることで浮力が落ちてしまい沈みが早くなってしまったり、S字アクションを出すために前重心にしていることから、ビックリするくらい飛ばなかった印象です。

 
3RD SAMPLE
重心移動システム投入で飛ぶように

セカンドプロトの飛ばないという問題点を解決するために、マグネットタイプの重心移動を搭載したプロトをここで初めて作りました。

シルエットは全く変えずに内部構造のみに手を加えたプロトで、重心移動の甲斐あって飛距離は大きく改善されたのですが、今度はS字アクションの幅がタイトになってしまいました。
狙っていたのはより大きなS字スラロームだったのでこれではアクションがNG。ただ、ヘッド上部にラインアイを付けたモデルがギリギリ及第点といった感じだったので、ここで初めてテスターの川本さんにテストを依頼しました。

 
3rd' sample
狙い通りのアクションとフォールスピードになる、が…

このプロトを受け取った川本さんから、改造されて戻ってきたのがこちら。

フロントにプラスチック板のキールを綺麗に付けて、なおかつフロント腹部に板オモリが貼り付けられて返ってきたのです。
この改造したプロトがまさに狙い通りのアクションとフォールスピードだったことに驚いたのですが、それ以上に川本さんの器用さに驚きました(笑)

大きく前進したかに思えたソマリの開発でしたが、ここで大きなトラブルに見舞われます…。
何が起きたかと言うと、川本さんの改造プロトを私が釣り場でロストしてしまったのです。理由はベイトタックルでのキャスト切れ。

当然、もう一度作り直そうと余っていたボツプロトで同じ改造を試みるも、あのドンピシャなアクションを再現することがなかなか出来ず、数ヶ月のタイムロスがありました。

 
4TH SAMPLE
“あの動き”を再現

川本さんが改造したプロトの動きを再現しつつ、全体的にフォルムを修正したのが4回目に作成したプロト。

秋田のテスターの加藤さんがランカーシーバスをキャッチするなど、実釣で使うレベルでは十分な仕上がりでしたが、求めていたアクションが僅かに出ないことや、細部に改善の余地が見られたため次の試作に取り掛かりました。

 
5TH  SAMPLE
ようやく現在の形に

この時に作られたのが製品版と同じ外観を持つプロト。

ワイドなS字アクションを出すために、ラインアイの位置を元の位置に戻したのと、スイムやフォール姿勢の微調整やマグネットの強度を調整を行い、ほぼ狙い通りのアクションに近づきました。

複数テスターによる実釣テストを試みたのもこのプロトからで、流速の早い清流系の河川から、工業地帯を流れる平地の河川などで実戦投入。最初からこのルアーが釣れるということは分かっていましたが、各地で多くの釣果が上がったことが非常に嬉しかったことを覚えています。

ただ、納得がいかなかったのが全体のデザイン。
具体的にどこが納得いかないという訳でなく、何となく気に入らない、そしてもっと良くならないものか…という考えの元、この後試行錯誤を始めることになりました。 

 
6TH〜8TH SAMPLE
納得のいくまで試行錯誤

細かな調整は必要なものの、前回プロトはほぼ狙い通りのアクションを実現。しかし、微調整とデザインの変更を行いました。

まずはキールを小さくして最適な大きさを探ってみたり。あるいはリアにもキールを付けてアクションにどのような変化が出るのかを見てみたり。

色々試した結果、結局は第5弾目のデザインが最も狙い通りのアクションが出ていることが確証されて、自信を持って次のステップに進むことが出来ました。

後日談ではありますが、このプロトの原型を作った川本さんからは「だから言ったやろ〜。プラ板と鉛を相当買って、切っては貼ってを繰り返したけぇ〜」と言われました。改めて川本さんは器用だなと…。

 
LAST SAMPLE
最後の最後までこだわる

やっとの思いで漕ぎ着けた金型発注、そして成形品を用いた最終サンプル。

ルアーのボディとなる部分をABSの板からで削り出す試作品と、専用の金型にABS樹脂を流し込んで作成する成形品では、データ通りに作ったとしても比重の誤差が生まれるため、浮力が異なりアクションやレンジに誤差が生じます。

設計者はその誤差を予め計算したデータを作成して金型を起こすのですが、そこが上手く行かないこともしばしば。そこを改善するために、成形品を使った最終サンプルを全部で20パターン以上作り、その中の一つが無事テストを合格。

最後のテストの時は、長かった開発を終えてホッとする気持ちと共に、これからプロモーションを頑張らねばというプレッシャーを感じた瞬間でもありました。

※ABSとはアクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂の総称。プラスチック素材の一種。

名前の由来

最後の最後に“somari 90(ソマリ 90)”という名称に決まったと伺いましたが、その由来を教えていただけますでしょうか?

三浦:実は意味はありません(笑)
というのも、本当はスモモという名称にしたかったんです。

S字スラロームアクション、スローシンキング、シャローランナーと、関連するワードの頭文字がSだったので、似たようなレンジを泳ぐkomomoと掛け合わせて、S字のkomomo的なイメージでスモモだなと。

今年はkomomo SF-125が20周年を迎えるタイミングでしたし、そういった意味でも丁度良いかなと。それで、早速スモモという名称で商標を調べたのですが、他の業種の会社さんにバッチリ取られていた訳です…。

これは困った。何か良い名前は無いかな…と考えてきた時に浮かんだのがソマリという品種の猫。何だか響きも可愛らしかったので、“よし、ソマリで行こう!”そんな軽いノリで名付けました。

ちなみに猫のソマリのスペルは“somali”。それに対してこちらは“somari”。

somari 90のロゴマーク。


この理由は文字やロゴにした時に収まりが良かったから。ただそれだけの理由です。決して間違えてる訳ではないので、誤字だというツッコミは無しでお願いします(笑)

あっ、名前は適当に付けましたが、適当なルアー作りはしていないので、それだけは忘れないでくださいね!

インタビュー後記

編集部:三浦氏の話からも何度もトライアンドエラーを繰り返し、アクションやフォールスピードはもちろん、見た目などの細部にまでこだわってきたことが十分に伺える。

近日中にはスイム動画も公開になるとのこと。somari 90最大の売りでもあるワイドピッチなS字スラロームアクション、水中で食わせの間を演出できる超スローシンキングなフォールスピードには注目だ。

somari 90

  • 全長 90mm
  • 重量 18g
  • タイプ スローシンキング
  • レンジ 5~40cm
  • アクション S字スラローム
  • フック #4
  • リング #3
  • 推奨エリア 河川・河口・干潟・港湾
  • 誕生日 2018年5月発売予定

 

公式商品ページ

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